私の三段峡物語
広島県の北西部に「三段峡」と呼ばれる渓谷がある。この渓谷には、二段滝、三段滝をはじめとして、数多くの滝があり、私にはたまらない所なのだが、私との相性が良くないと見えてなかなかこの渓谷にはたどり着けなかった。
この物語は、この渓谷に3回挑戦をした私の”命がけ(?)”の記録である。
[第1部]

第1回目の挑戦は、1994年3月14日。私は、当時大学院修士1年で、九州大学に行っていた友人SS氏の結婚式に招待されて、福岡に行った帰りだった。一緒に行った友人のうち2人は、そのあとハワイに旅行に行くということで先に帰ってしまった。せっかく九州に来て、そのまま帰ってしまうのも勿体ないので、ひとりで山陽道を散策しながら帰ることにした。
この時、寄り道したところは、岩国の錦帯橋、広島の平和公園、尾道と三段峡だった。
3月中旬といえば、私の住んでた神戸も福岡も岩国も広島の平和公園だって、「春!」。当然広島県の山奥も「春に決まってるやん!」と何の疑いもなく三段峡に向かったのであった。
広島駅8:47発の電車に乗った。平日だったせいもあり、はじめのうちは高校生がたくさん乗っていたのだが、その数がだんだんと減っていくのだった。可部で乗り換えると、4両編成の電車が2両編成に変わった。この時点で乗ってる人は数えるくらい。こんな平日に遊べるのは、大学生の特権(?)なんて思いながら電車に揺られていると、窓の外を舞う物体を発見。「ああ、山沿いは雨が降っているんやなぁ。」なんて思っていると、それがすぐに白い物体に変わった。と、まもなく周りの景色も雪景色に変わってしまった。
うそー、そんなん聞いてないで! はい、誰も言ってません(笑)。広島から電車に揺られること約2時間で終点の三段峡駅に到着した。ここで降りたのは、私を含めて確か4人だったと思う。駅周辺には、食堂、土産物を売ってるお店が数件と、改装中のホテル(三段峡ホテル)があった。食堂は1件くらいしか営業していなかった。駅を出て降り積もる雪に少しボー然としながら考えた。せっかく来たんだし、乗ってきた電車で帰るのもしゃくだから、行けるところまで行こう。ということで遊歩道を歩いていくことにした。
幅1mくらいの遊歩道には、20cmくらいの雪が積もっていて、崖になっている側に柵が施してあるとはいえ、足を滑らせて下に落ちても誰も助けてくれへんやろなぁ、なんて思いながら用心深く進んでいった。雪景色の渓谷というのもなかなか情緒があってすばらしかった。雪が周囲の余計な音を吸収して、川を流れる水の音だけが、私を包んでいた。
歩いていくうちに雪は止んだが、遊歩道の雪が多くなってきた。20分ほど歩いたところで、雪崩のために柵が谷の方に落とされていて、遊歩道が決壊していた。その区間は、ほんの数メートルだったので、行っていけないことはなかったのだが、万が一足を滑らせてもこれだけ人気のないところだと、助けを求めるのは不可能だなぁ、と思いここから引き返すことにした。まだ、二段滝はおろか、三段滝すら見てないのに・・・
帰りは、電車の時間に合わなかったので路線バスで帰ることにした。電車よりも少し割高だけど、早く広島市内に到着することができる。バスの時間まで20分くらいあったので、駅のそばの食堂(三段峡センター)に入ってコーヒーを飲むことにした。店の客は、当然私ひとり。体が冷えてたせいもあって、とてもおいしいしかった。店のおばさんに少し話を聞いてみると、「4月中旬くらいまで雪が残っていることがあるから、ゴールデンウィークくらいからがいい季節になる。」とのことだった。パンフレットもくれたので見てみると、きれいな写真がいっぱい載っているんだよね。もう一度絶対に来よう!と心に誓った私であった。
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Copyright (C) 1998 Kazuyoshi Nakajima